top of page

 孤 高 の 達 人

いまさら説明など不要な「絶対的」な存在である。
 
しかし晩年の弟子たちが語る「大山倍達先生像」は、渡邊一久総師範の知る姿とはかけ離れたものであった。
現役時代の大山倍達先生にただ一人「組手稽古」を叩き込まれた渡邊一久総師範の口から「知られざる真実の姿」が語られた。
 
「大山(倍達)先生は、相手の力量に合わせて「組手稽古」をする。受ける必要のない攻撃に対しては身体で受け止め、技を覚えさせる。誰も大山(倍達)先生に受け技を出させるような弟子たちはいなかった。だから皆大山(倍達)先生の受け技の怖さを知らないのだ。あれは「受け」ではなく「攻撃」そのものなのだ」
 
「大山(倍達)先生と組手をすると、こちらの攻撃は届かないのに、先生の攻撃は届いてしまう。知らないうちに「間合い」を詰めたり、離れたりしている。私は三年かけて「間合い」取りの「極意」を盗み取った」
 
稽古の合間に、渡邊一久総師範の口から語られる「達人」大山倍達先生の「秘話」は時として稽古以上の面白みがあり、道場生のみに与えられた「特権」である。
bottom of page